AI の誤情報は、AI の運営会社に直してもらえますか?
答えへの意見を送る仕組みはあります。たとえば Google は、AI による概要が不正確だと思うときは、概要の下の低評価のアイコンから「問題を報告」できるとしています[2]。送られた意見は AI による概要の機能の改良に使うと説明されていますが、報告した答えをいつ、どう直すかは書かれていません[2]。報告は「意見を届ける」手段で、自社の説明を確実に直す手段ではないと考えておくのが安全です。
AI の答えは、その都度、学習した内容や検索で見つけたページから組み立てられます。Google は、AI による概要や AI モードが、関連する複数の検索を行って答えを組み立てる場合があり、答えを作るときに裏付けになるウェブページを特定すると説明しています[1]。つまり、AI が拾うページの中身が正しくなれば、答えも変わる余地が生まれます。
| 方法 | できることと、向いている場面 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| AI の運営会社への報告 | 答えの画面から、誤りや問題を報告する(Google の AI による概要では低評価のアイコンから[2])。安全や法令に関わる明らかな誤りを、まず知らせたいときに向く | 反映の時期は示されていないため、同じ質問で様子を見る |
| 公式サイトを直す | AI が拾う公式のページに、正しい値と条件を明記する。価格・仕様・条件・古い情報など、ほとんどの誤りに向く | 直した後に、同じ質問を同じ回数だけ聞いて比べる |
| 第三者のページに訂正を頼む | 販売店・比較サイト・記事の古い記載の更新を頼む。AI が第三者のページを根拠にしているときに向く | そのページが根拠から外れたか、内容が新しくなったかを見る |
まず報告をしてもかまいません。ただ、それだけで待つのではなく、AI が何を根拠に間違えたのかを突き止め、そのページを直すことが本筋です。
AI は、自社製品の何を間違えやすいですか?
誤りは 5 つの型に分けると、直す場所を決めやすくなります。下の表の症状は、どれも架空の例です。
| 型 | 症状の例 | よくある原因 | まず見る場所 |
|---|---|---|---|
| 価格 | 改定前の希望小売価格で案内される | 改定のお知らせだけが残り、製品ページに今の価格がない | 製品ページの価格の欄、価格改定のお知らせ |
| 仕様・型番 | 重さや対応規格が違う。似た型番の値が混ざる | 仕様が画像や PDF の中だけにあり、文字で読めない | 製品ページの仕様表、カタログの PDF |
| 条件 | 金利・手数料・対象者・保証の条件が違って説明される | 条件が注記や別のページに散らばり、どれが今の条件か分からない | 商品の説明ページ、よくある質問、重要事項の書面 |
| 旧モデル・古い情報 | 販売を終えたモデルが「おすすめ」として紹介される | 旧モデルのページに販売終了や後継モデルの記載がない | 旧モデルのページ、製品の一覧、古いニュース |
| 競合との混同 | 他社の製品の機能や価格が、自社の製品の説明に混ざる | 比較記事の書き方があいまい、製品名が他社と似ている | AI が根拠にした比較記事、自社の比較表 |
業界によって、間違えられやすい項目は違います。メーカーの型番と仕様は製造業・メーカーのガイド、金利や手数料などの条件は金融・保険・法人サービスのガイドで詳しく扱います。
なぜ AI は、古い情報や間違った値で答えるのですか?
原因は大きく 4 つです。どれが当てはまるかで、直す場所が変わります。
- 学習の時点が古い: AI のモデルは、ある時点までのデータで学習しています。Anthropic は、Claude のモデルはそれぞれの学習の締め切りより後の出来事を知らないことがあり、最近のことを聞かれても正確な情報を持っていない場合がある、と説明しています[3]。価格の改定や新しいモデルの発表の後に古い答えが出る原因の 1 つです。
- 検索で拾うページが古い・あいまい: 検索を使って答える AI は、その場で見つけたページを根拠にします[1]。OpenAI も、ChatGPT の検索機能の検索結果にサイトを出すために、OAI-SearchBot というクローラーを使うとしています[4]。拾われたページが古いお知らせや旧モデルのページなら、答えも古くなります。
- 公式サイトに事実が文字で書かれていない: 通信キャリアの業界を対象にした国内の調査では、Gemini の答えで料金や容量に触れた引用は、通信キャリアの公式サイトが上位を占めていました[5]。逆に、価格や仕様が公式サイトの文字として見つからなければ、AI は別のページから値を拾うしかありません。
- 第三者のページの情報が古い・偏っている: 同じ調査では、通信速度に触れた引用は、第三者のサイトから 3,865 件、事業者の公式から 72 件でした[5]。第三者のページが多く使われる項目では、そこが古いと答えも古くなります。7.5 万のブランドを調べた別の調査でも、AI による概要での見え方は、被リンク(0.218)よりウェブ上でのブランドの言及(0.664)と強く相関していました[6]。どちらも相関で、因果を示すものではありません[6]。
このほかに、根拠がないのにもっともらしい答えを作ってしまう「ハルシネーション」もあります。OpenAI などの研究者の論文は、AI が分からないときに「分からない」と言うより推測するほうが学習や評価で有利になるため、最新の仕組みでもハルシネーションが残ると論じています[10]。
誤りかどうかは、どう確かめますか?
営業や顧客から「AI に聞いたら違っていた」と言われたら、その 1 回の答えだけで判断せず、次の順で確かめます。
質問を決める
顧客が実際に聞きそうな言い方で、質問を決めます。「〇〇の価格は?」「〇〇と△△の違いは?」「□□に向いた製品は?」のように、型ごとに 1 つ以上用意します。
製品資料の原文と照らす
答えの値を、カタログ・仕様書・価格表・約款などの原文と照らします。「どの値が」「資料のどのページのどこと」違うかまで記録します。原文に書かれていない値は、推測で正しいとも誤りとも決めず、確認に回します。
根拠にされたページを特定する
答えに出典が付いていれば、それを開いて、誤った値がどこから来たかを確かめます。公式の古いページか、第三者のページか、出典がないのかで、次に直す場所が決まります。
| 項目 | 書くこと | 記入の例 |
|---|---|---|
| 質問 | 聞いた言い方そのもの | 「電動ドライバー DX-20 の重さは?」 |
| 答えの割合 | 何回のうち何回、誤った値が出たか | 3 つの AI に 3 回ずつ、9 回のうち 4 回 |
| 誤った値 | 答えの原文 | 「約 1.6 kg」 |
| 正しい値と根拠 | 資料の名前・版・ページと位置 | 「1.2 kg」(総合カタログ 2026 年春版・24 ページの仕様表) |
| 根拠にされたページ | 答えの出典 | 販売を終えた DX-18 の製品ページ |
| 型と直す先 | 5 つの型のどれか・直すページ | 旧モデル・DX-18 のページに後継の案内を足す |
どこを直せば、AI の答えが変わりますか?
Google は、AI による概要や AI モードに表示されるための追加の要件はなく、特別な最適化も要らないとしています[1]。AI 用のファイルや特別な構造化データを作る必要もないと明記しています[1]。直す場所は「AI が根拠にしたページ」と「本来、根拠にしてほしい公式のページ」です。
| 根拠にされたページ | 直すこと | 気をつけること |
|---|---|---|
| 公式の製品ページ | 今の価格・仕様・条件を、本文や表の文字で明記する | 画像や PDF の中だけに値を置かない |
| 公式の旧モデルのページ | 販売終了の時期と後継モデルへの案内を、ページの冒頭に書く | 消さずに残し、「今の製品ではない」ことを明記する |
| 公式のお知らせ・古いニュース | 改定や終了の後の情報へのリンクを足す | 古い記事の値を、今の値と取り違えられないようにする |
| 公式の比較表・よくある質問 | 自社の製品どうしの違いと、よく聞かれる値を 1 か所にまとめる | 他社の製品との比較は、事実で確かめられる範囲だけにする |
| 第三者のページ | 販売店・比較サイト・記事の運営者に、正しい値と公式のページを示して更新を頼む | 頼めるのは事実の訂正だけ。評価や順位の変更は頼まない |
構造化データを使っている場合は、ページに表示している文字と中身を一致させます[1]。更新日は、ページの目立つ位置に「最終更新日」などのラベルを付けて表示し、構造化データの日付とそろえます[9]。いつの情報かが分かれば、読む人が古いお知らせと区別しやすくなり、取り違えの元を減らせます。
直すページには、何をどう書けばよいですか?
- 値は文字で書く: 価格・重さ・寸法・対応規格・金利・手数料などは、画像の中ではなく本文や表の文字で書きます。
- 単位と条件を同じ文に書く: 「税込」「年率」「〇〇の場合」のような条件を、値と離さずに書きます。
- 型番は正式な表記で、毎回同じに書く: 似た型番やシリーズ名との違いが分かるようにします。
- 旧モデルは「いつまで」と「後継は何か」を書く: 販売を終えたページを消すより、終了の事実と後継への案内を書くほうが、取り違えを防げます。
- 時点を書く: 「2026 年 10 月時点」のように、いつの情報かを本文と更新日で示します。
| 項目 | Before(直す前) | After(直した後) |
|---|---|---|
| ページの冒頭 | 「軽くて取り回しのよい DX-18」 | 「DX-18 は 2025 年 12 月に販売を終えました。後継は DX-20 です」 |
| 重さ | 仕様は PDF のカタログだけに記載 | 本文の仕様表に「質量 1.6 kg(DX-18)」と書き、DX-20 の「1.2 kg」へのリンクを置く |
| 価格 | 発売時の価格の案内が残っている | 価格の記載を外し、「販売終了・価格の案内はありません」と書く |
| 更新日 | 表示なし | 「最終更新日 2026 年 10 月 1 日」を見出しの下に表示 |
比較表で他社の製品に触れるときは、相手の公式の情報で確かめられる値だけを使います。あいまいな比較は、それ自体が「競合との混同」の原因になります。
直した後は、どう確かめますか?
ページを直しても、すぐに答えが変わるとは限りません。Google 検索では、クロールに数日から数週間かかることがあり、リクエストしても検索結果にすぐ表示されるとは限らず、まったく表示されないこともあるとされています[8]。少数のページなら Search Console の URL 検査ツール、多くのページならサイトマップで、再クロールを依頼できます[8]。
直す前に測っておく
直す前の誤りの割合を、質問ごと・AI ごとに残します。比べる元がないと、効果は分かりません。
直して、再クロールを依頼する
ページを直したら、URL 検査ツールやサイトマップで知らせます[8]。第三者のページへの訂正の依頼も、このときに送ります。
同じ条件で測り直す
数週間おいて、同じ質問・同じ AI・同じ回数で聞き直し、誤りの割合を比べます。AI の答えは 1 回ごとに大きくぶれるため、1 回の違いではなく割合で見ます[7]。
測り続ける
価格の改定や新しいモデルの発表のたびに、古い答えが戻ってこないかを定期的に確かめます。
| 質問 | 直す前 | 直した後 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| DX-20 の重さは? | 9 回のうち 4 回、旧モデルの値 | 9 回のうち 0 回 | 誤りが消えた。旧モデルのページへの案内が効いた可能性がある |
| DX-20 の価格は? | 9 回のうち 3 回、改定前の価格 | 9 回のうち 2 回 | まだ残る。根拠のページを開き、第三者のページを確かめる |
答えが変わらないときは、根拠のページが入れ替わったか、別のページが拾われていないかを、もう一度確かめます。AI に自社の製品がそもそも出てこない場合の切り分けは、AI に自社が出てこないときのガイドで説明しています。
社内では、AI のレピュテーションリスクとしてどう説明しますか?
AI の誤った説明は、Web の担当だけの問題ではありません。企業のマーケティングや広報などの担当者 180 人に 2025 年 9 月に行った調査では、70.5% が「生成 AI が誤った情報や古い情報をもとに自社の情報を語っている可能性」に不安を感じていました[11]。87.3% が、生成 AI が自社や他社について、誤った情報や競合と混同した情報を示した事例を見たことがあると答えています[11]。
社内に説明するときは、「AI が間違っている」という印象ではなく、「何を・どのくらいの割合で・どの資料と違うか」を示すと、判断が進みます。上の誤りの記録をそのまま使えます。
| 部署 | 見ること | 決めること |
|---|---|---|
| Web の担当 | AI が根拠にしたページと、公式サイトの書き方 | 直すページと直し方、再クロールの依頼 |
| 広報 | 第三者のページの古い記載、発表と公式サイトのずれ | 第三者への訂正の依頼、発表の文面の時点の書き方 |
| 法務・コンプライアンス | 金利・手数料・保証・安全など、誤ると問題になる条件 | 優先して直す誤りの基準、社外への説明の範囲 |
| 品質・商品企画 | 仕様・型番・対応規格の正しい値と、その根拠の資料 | どの資料の、どの版を正とするか |
優先順位は「誤った場合の影響」で決めます。安全や契約の条件に関わる誤りを先に、表現の細かな違いは後に回します。
この確かめ方を、続けて回すには?
質問を決め、複数の AI に繰り返し聞き、資料の原文と照らし、直した後も測り続ける。手作業でも始められますが、製品や質問が増えると続けるのが難しくなります。
- ERABARE は、選んだ質問を 7 つの AI に 3 回ずつ聞き、自社が出てきた割合と誤りを並べます。
- AI の答えを製品資料と照らし、価格・仕様・条件の食い違いを、資料のどこに書いてあるかと一緒に示します。原文にない値は推測で埋めません。
- どのページに何を書けばよいかを、Before/After を添えた改善カードにまとめ、制作担当や制作会社へ渡せる形にします。
- 直した後も同じ質問で測り続け、答えが変わったかを質問ごとに確かめます。
AI の答えは各社の AI の仕組みで決まるため、ERABARE も紹介や順位、誤りが消えることを保証するものではありません。
よくある質問
AI の会社に、自社の説明を直接直してもらえますか?
答えの画面から誤りを報告することはできます。Google の AI による概要では、低評価のアイコンから問題を報告できます[2]。ただ、いつ・どう反映されるかは示されていないため、AI が根拠にしているページを直すことを基本にします。
ページを一度直せば、すぐ反映されますか?
すぐとは限りません。Google は、クロールに数日から数週間かかることがあり、リクエストしてもすぐ表示されるとは限らないとしています[8]。学習の時点が古いモデルは、最近の変更を知らないこともあります[3]。直した後は、同じ質問で測り続けて確かめます。
ハルシネーションは防げますか?
完全に防ぐことはできません。OpenAI などの研究者の論文も、最新の仕組みでもハルシネーションが残ると論じています[10]。公式サイトに正しい値を文字で書き、根拠にされやすいページを整えることで、誤りが出る割合を下げることを目指します。
販売を終えた旧モデルのページは、消したほうがよいですか?
消す前に、販売終了の時期と後継モデルへの案内をページの冒頭に書くことを検討します。ページがあれば「今の製品ではない」ことを伝えられ、第三者のページや古い記事から旧モデルの情報が拾われたときの取り違えも防ぎやすくなります。
競合の製品と混ざって説明されるときは、どうすればよいですか?
まず答えの出典を開き、どのページで混ざったかを確かめます。比較記事が原因なら、運営者に正しい値と公式のページを示して訂正を頼みます。自社のページでは、製品名と型番を正式な表記でそろえ、自社の製品どうしの違いを表で示します。
出典
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